妊娠初期の摂取が必要といわれている「葉酸」。けれど、最近は「妊活中から必要」「妊娠初期だけでなく、妊娠全期間ずっととったほうがいい」ともいわれています。葉酸はいつからいつまで摂取したほうがよいのか? どうして妊娠女性に必要なのか? 葉酸についての疑問を産婦人科の先生に聞きました。

そもそも葉酸って何ですか?どうして妊娠中に必要なの?

日本医科大学多摩永山病院 院長、日本医科大学産婦人科 教授 中井章人先生

答えてくれた先生
日本医科大学多摩永山病院 院長、日本医科大学産婦人科 教授
中井章人先生

葉酸はビタミンB群の一つ

葉酸はビタミンB群の一つで、赤血球をつくり、遺伝情報にかかわるDNAの合成に必要な栄養素。おなかの赤ちゃんの体の形成にも役立ち、母体と胎児に欠かせません。

葉酸はほうれん草やモロヘイヤ、ブロッコリーなど緑色の濃い野菜に多く含まれます。そのほかにも、きな粉や納豆などの大豆食品や焼きのり、レバー類にも含まれていますが(※1)、 日本人にはとりづらく、不足しがちな栄養素ともいわれています。
※1レバー類にはビタミンAも多く含まれており、妊婦が過剰摂取すると胎児に影響が出るリスクがあります。日常的にレバーを大量に摂取しないよう注意しましょう。

妊娠初期の摂取で胎児のトラブルの予防効果が

葉酸はビタミンB6、ビタミンB12とともに、細胞の分裂や分化に必要なアミノ酸の一種「メチオニン」の代謝をサポートします。そのため、細胞分裂がとくに盛んな妊娠初期の摂取が強くすすめられてきました。

中でも葉酸を1日400㎍(0.4㎎)摂取することで、胎児の脊椎の一部の形成が不完全な「二分脊椎症(にぶんせきついしょう)」や「神経管閉鎖障害」などの発生リスクを抑える効果があることがわかっています。予防のために摂取したい時期は妊娠初期ですが、体の中の葉酸が十分に足りた状態になるまでに時間がかかるため、妊娠が成立する3カ月以上前から摂取することが望ましいとされています。
ですから、妊娠を考えている女性は、妊娠前から葉酸をとることがすすめられているのです。

妊娠初期だけじゃない。葉酸を妊娠中ずっととったほうがいい理由

妊婦さんイメージ

最近の研究では、妊娠初期以降もずっと葉酸をとり続けることで、さまざまなトラブルを予防できることがわかってきています。

たとえば、妊娠中に血圧が上がる「妊娠高血圧症候群」や、おなかに赤ちゃんがいる状態で胎盤がはがれてしまい、母子ともに命にかかわる「常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)」などの発症リスクも、葉酸をとることで抑制されることがわかってきました。

さらに葉酸は赤血球の生産に必要な栄養素であるため、造血にも欠かせません。赤ちゃんの成長のためだけでなく、妊婦さん自身の体調、健康のためにも妊娠全期間でとり続けることが大切です。

また、動脈硬化や脳卒中などのリスクを下げるという研究結果も報告されており、産後も続けてとることを意識したい栄養素です。

妊娠中に必要な葉酸。どれくらいをどうやってとる?

ほうれん草

妊娠全期間で葉酸をとることが大切、といってもどのくらいの量を、どうやってとるといいのでしょうか?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、妊娠中の葉酸摂取推奨量は1日480㎍。これは、食事だけでとるのはかなり難しい量。葉酸は水溶性ビタミンで水に溶ける性質があり、体内への吸収率も悪く、なかなか十分な量がとれないのです。そこで、サプリメントで補うことが大切になってきます。

また、葉酸だけをとればよいというものでもなく、ビタミンB6やビタミンB12を含むマルチビタミンと同時に摂取することで十分な効果が発揮でき、効率よく働くことができます。葉酸+マルチビタミンのサプリを選ぶといいでしょう。ただし、ビタミンAなど摂取量に注意が必要な栄養素もあるため、妊婦の体に配慮したものを選びましょう。

葉酸をとる量には上限もあり、1日900~1000㎍を超えないように、サプリメントに記載の用量はきちんと守ることも大切です。

赤ちゃんの健やかな成長のために、食事に加えて、サプリメントでのフォローでしっかり葉酸をとっていきたいですね。
記事提供/たまひよ

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